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■ 東北ウーマンインタビュー


「本物の日本」に出会える場所、東北

「本物の日本」に出会える場所、東北
Go!Go!Tohoku!!事務局 ハラムズ・アン・ジェシカさん

オーストラリアにいた幼少期から日本文化と身近な環境で過ごし、大学生の時には金沢大学に留学したジェシカさん。一度はオーストラリアで就職するものの、日本で働きたいという想いからJETプログラムを利用して日本で就職されました。仕事内容や東北地域の魅力について、伺いました。

 

昔から身近に感じていた日本

 

長瀬) ジェシカさんは、ご出身はどちらですか。

ジェシカ ) オーストラリアのキャンベラです。位置はシドニーとメルボルンの間ですね。首都ですが、結構田舎なのであまり首都らしくないんですよ。自然に囲まれていて、カンガルーが多いです。

長瀬) オーストラリアには以前私も行ったことがあるのですが、日本人が多い印象でした。

ジェシカ ) 多いですね。特に北の方ですね、ゴールドコーストやケアンズです。私も初めて訪れた時には、日本語の看板やメニューが多くて驚きました。

長瀬) 日本に来るきっかけは何だったのですか。

ジェシカ ) 小学生の頃から、私の実家には日本人の留学生がホームステイに来ていて、そこで日本の文化に興味を持ちました。その頃から日本語の勉強をするようになりました。初めて日本に来たのは高校生の時なので15歳でした。語学留学で、ホームステイをしました。その後オーストラリアに戻り大学で勉強して、3年生時の1年間は石川県の金沢大学に留学しました。留学が終わり大学を卒業し、オーストラリアで社会人として2年間ほど働きましたが、やっぱり日本で働きたいなと。若いうちに、違う国で働いて生活することにチャレンジしてみたいと思ったんです。JET(ジェット)プログラム※だと、都市だけでなく地方にも仕事があって、地方で働ける機会はなかなかないと考え、JETプログラムを利用しました。そして、ALTとして福島県に来ることになりました。

※JETプログラム…語学指導等を行う外国青年招致事業(The Japan Exchange and Teaching Programme)の略で、外国青年を招致して地方自治体等で任用し、外国語教育の充実と地域の国際交流の推進を図る事業。JETプログラム参加者は、「外国語指導助手(ALT)」、「国際交流員(CIR)」、「スポーツ国際交流員(SEA)」の3つの職種で来日する。

長瀬) 大学を卒業後、オーストラリアで一度就職されたということですが、その時はどのようなお仕事をしていたのですか?

ジェシカ ) 最初は移民局で働いていました。移民局の情報をメディアや政府に提供する仕事でした。

 

 

長瀬) 母国を離れて違う国で働くということについて、不安などは感じなかったですか。

ジェシカ ) もちろん、ありました。文化の違いや、冬の寒さが厳しいことなどです。(笑)でも、昔から日本について学んでいたので、すごく不安という訳ではではなかったですね。あとは、オーストラリアは日本からそこまで遠くないし、家族とも頻繁に連絡を取り合えるので問題ないです。それに実は、妹も日本で働いているので、家族が近くにいる安心感がありますね。

長瀬) 妹さんも日本で働いているんですね!ちなみに、妹さんはどちらで働いているんですか。

ジェシカ ) 岩手県の釜石市です。同じJETプログラムですが、ALTではなく、CIR(国際交流員)として働いています。来年はラグビーワールドカップが釜石市で開催されるので、それに向けての準備などをしています。

長瀬) ご家族皆さん、日本が好きなんですね。

ジェシカ ) そうなんですよ、不思議なんですけれど。やはりオーストラリアでは日本人も多いですし、日本はとても馴染みが深い国です。

 

東北地域の本当の魅力を、もっと海外に伝えたい

 

長瀬) 宮城県に来ることになったきっかけは何ですか?

ジェシカ ) 3年間ほど福島県でALTの仕事をしていましたが、違う仕事に挑戦してみたいと思っていました。オーストラリアにいた時は、福島県の魅力について全く知りませんでしたが、実際に住んでみたらすごくいいところで、それが伝わっていないのはもったいないなという気持ちが強くなりました。福島県や東北地域の全然知られていない部分、本当の姿を、自分の力で海外に発信したい、役に立ちたいという想いになったんです。そこで、仙台市で行われたインバウンド向けのセミナーに参加しました。そのセミナーでGo!Go!Tohoku!!の事業を行っていた方に出会って、仙台市に来てくれないかと言っていただき、こちらに来ることになりました。

長瀬) 素敵な出会いですね。現在されている仕事について教えていただけますか?

ジェシカ ) テレビ局である仙台放送が行っている事業なんですが、インターネット上で東北地域の魅力を海外に向けて発信し、インバウンドの推進や地域復興の推進を行っています。テレビ局ということで、動画撮影などの得意分野も活かして行っています。外国人が海外旅行へ行く際に一番参考にしているのは、実は、現地に住む外国人の口コミなんです。

 

 

長瀬) そうなんですか。確かに、実際に住んでいる方の声の方がリアルでわかりやすいかもしれないですね。

ジェシカ ) そうなんです。仙台放送では、東北アンバサダークラブという団体を組織化しています。そのクラブは、仙台市に住む外国人留学生が多く、現在は216名ほどが在籍しています。そのメンバーと一緒に東北6県を周って、その地域の魅力や面白さなどをメンバーの目線でフェイスブックやインスタグラムで発信する、というのが、私たちの主な仕事です。東北アンバサダークラブのメンバーは、東北地域内の自治体から依頼を受けてその地域を訪れ観光をし、そこで得た情報をフェイスブックやインスタグラムで発信していきます。また、外国人の方にどうやって観光を楽しんでもらうかを、自治体が確認するためのモニターとしても活動しています。

長瀬) ジェシカさんもそのメンバーとして働いているのですか?

ジェシカ ) 私の仕事は、東北アンバサダークラブの運営や、依頼のあった自治体へ行く時の通訳や翻訳、フェイスブックとウェブサイトのコンテンツ編集が主です。

長瀬) 通訳までされているんですね。

ジェシカ ) そうですね。少ない人数で行っている事業なので、一人あたりの仕事の幅は広いかもしれません。

 

 

長瀬) 現在、Go!Go!Tohoku!!の事務局では、どのような国籍の方が働いているんですか。

ジェシカ ) 事務局には全部で4人いて、私以外は2人が日本人、もう1人が台湾の方です。Go!Go!Tohoku!!のホームページは3言語で展開していて、グローバルのページと台湾のページとベトナムのページがあり、台湾の方は台湾のページの編集をメインに担当しています。

長瀬) 近年、東北地域を訪れる外国人の方は、どこの国からが多いですか。

ジェシカ ) 台湾の方が一番多いですね。昨年から、仙台市と台北を結ぶLCC航空の直航便の数が増えてきたことが影響していると思います。台湾以外を見ても、やはりアジアの方が多いと思います。ですが、これから日本ではラグビーの大会や、東京オリンピックも開催されるので、少しずつ欧米の方も増えていくと思います。

長瀬) 今のお仕事の大変なことはありますか。

ジェシカ ) 大変なことは、少人数で仕事を行っているので、できる仕事の範囲が限られてくることです。あとは、国の事業に頼っている部分が多い仕事なので、国に出していただいている予算などの都合上、1年以内で行う仕事があったりするのが、大変なところではあるかなと思います。長期的な仕事があまりないですね。

長瀬) なるほど、1年単位で仕事が決まるんですね。では、逆に嬉しいことはありますか。

ジェシカ ) この仕事を通じて東北地域の様々な場所に行かせてもらって、たくさんの魅力を知ったり発見したりすることができて、本当に楽しいし嬉しいです。さらに、今の本当の福島県のことを海外に伝えたいという想いが強かったので、この仕事を通じて携われているのがとても嬉しいです。

長瀬) 仕事をしていて、成果を感じることはありますか。

ジェシカ ) ホームページやSNS等で『Go!Go!Tohoku!!を見て、東北地域に来たよ』というメッセージや反響をいただいたり、自分の知り合いが興味を持ってくれたりすることが増えたので、そういう時には成果というか、自分の仕事が周りの人に届いているんだなと感じますね。

 

東北地域は、本物の日本と出会える場所

 

長瀬) 東北地域で実際に働いてみて、感じたことはありますか。

ジェシカ ) 東北地域はまだ海外にそこまで知られていないけれど、個人的に『本物の日本は東北地域だ』と思っているんです。昔からほとんど変わらない歴史や文化がたくさん残っていて、外部の人でも地元の人々と交流しながら東北地域の生活を体験できる機会が多いと思いました。そういった点でも東北地域は魅力的だなと思っています。

長瀬) 確かに、昔ながらの文化や特色が根強く残っている部分が多いですね。私は栃木県那須塩原市出身なので、幼少期から東北地域は身近に感じていました。実際に東北地域に住んでみたら、東北6県はそれぞれ個性というか、色が強くて、想像していたより魅力的でした。栃木県にはない魅力をたくさん感じました。

ジェシカ ) Go!Go!Tohoku!!の仕事を通して分かったことなのですが、長瀬さんのように、地元にずっと住んでいるとその地域の魅力に気が付かなかったりするんですよね。その人にとっては当たり前のものでも、他地域の人や海外の人からするととても面白かったり魅力的だったりします。それは東北地域にももちろん言えることで、まだまだ発見できていない魅力がたくさんあると思っています。

 

 

長瀬) 栃木県にも、私が知らない魅力があるのかもしれません。

ジェシカ ) たくさんあると思いますよ。あと、最近考えるのは、東北地域の人にもっと海外に行ってほしいということです。東北地域の人は日本の他地域に比べても、パスポートを持っている人の割合が一番少ないんです。それはとてももったいないことだと思います。私が海外をを訪れた時の経験ですが、『どこから来たの?』と聞かれて『キャンベラです』と答えた時に、知らないという反応をもらうことが度々ありました。でもそれは、『キャンベラってこんなところなんですよ』と自分で伝えて、知ってもらうきっかけになるんですよね。東北地域の方も海外に行ったら、自分の住んでいるところをPRするチャンスがあるんじゃないかなと思います。東北地域を海外にPRするひとつの方法になると思います。

長瀬) その方法なら、より確実に相手に届く気がします。日本での働き方と、海外での働き方では違うところはありますか。

ジェシカ ) 職場文化が少し違ったりします。日本人の方はとにかく働き者です。それに慣れるのにはちょっと時間がかかりました。休むことが罪悪感でしたね。(笑)オーストラリアでは逆に、休まないと怒られます。そういう意味で、日本とオーストラリアとでは違うなと思います。

長瀬) 確かに、日本人は少し働きすぎなところがありますよね。

 

 

長瀬) 仕事以外のお話になるのですが、ジェシカさんは趣味などありますか。

ジェシカ ) 旅行と運動が好きですね。旅行は、行ったことのない新しい場所に行くことが多いです。運動は水泳とハイキングが好きです。自然の中にいることが好きなので、東北地域が好きなのかもしれません。

長瀬) オーストラリアも自然が多いので、そこは共通していますね。

ジェシカ ) そうですね。ですが、オーストラリアと日本ではまた特徴が違ったりします。日本の方が、四季がはっきりしていて好きなんです。

長瀬) オーストラリアには定期的に帰られるんですか。

ジェシカ ) クリスマスの時期はだいたい帰りますね。日本で言うお盆みたいなイベントなので。私の理想としては、半年間オーストラリアで過ごして、あと半年間は日本で過ごしたいですね。

長瀬) 日本が寒い時期はオーストラリアで、暖かい時期は日本ですか。それいいですね!(笑)

ジェシカ ) そんな仕事はなかなかないですが。(笑)

長瀬) ジェシカさんの今後の人生計画はありますか。

ジェシカ ) 今ちょうど迷っている時期なんです。30歳になって、これからも日本で働き続けるか、オーストラリアに戻るかはよく考えています。いずれにせよ、日本とオーストラリアのつながりのある仕事は続けたいなと思っています。できればもうしばらくは東北地域で、インバウンドに関わる仕事をしていたいです。最短でもオリンピックまでは日本で働こうと思っています。その後のことはまたその時に考えます。(笑)

 

 

長瀬) オリンピックまで、あと2年ですもんね。あっという間ですよね。

ジェシカ ) そうですね。もう少ししかないので、とても迷っているところです。

長瀬) Go!Go!Tohoku!!としてのこれからの目標などはありますか。

ジェシカ ) 今までの目標とそこまで変わりないんですが、もっともっと東北地域の魅力を発見して海外に発信することによって、東北地域を盛り上げたいなと思っています。海外で東北地域の認知度を上げるのは大事だと思うんですが、東北地域に住んでいる人たちに地元が素晴らしいところだと分かってもらえるように、頑張っていきたいなと思っています。課題としては、今まではお祭りなどのイベントや特定の場所のPRは行ってきたのですが、自治体や県全体としてのPRは行っていなかったので、東北地域に長く滞在してくれる観光客が少なかったんですね。なので、今後は東北地域の広域連携を強化していきたいなと考えています。

長瀬) 今まで行った東北地域の場所で、一番好きなところはありますか。

ジェシカ ) いっぱいあって決められないですが、特に好きなのはお祭りです。お祭りを見に行くとどこでも、ただの観光客ではなく地元の人になれるような気がして、とても楽しく魅力的だなと思います。

長瀬) Go!Go!Tohoku!!のFacebookページやインスタグラムで、お祭りの様子が掲載されていたので拝見しましたが、お祭りの熱気がものすごく伝わってきました。

ジェシカ ) ありがとうございます。SNSを通して見て下さる方に伝えられるように努力していますが、お祭りの魅力はSNSには収まりきらないなと思っています。自分の目で見てみないと伝わらないと思います。なので、もっと実際に足を運んでくれる方が増えればいいなと思います。

長瀬) お友達が日本に来て、ジェシカさんが案内するということもあるんですか。

ジェシカ ) ありますね。1年に1,2回は誰か来て、案内しています。そういう時に、初めて日本に来る人は、だいたい東京都・京都府・大阪府といった王道の観光地しか訪れないんですが、私がいることで東北地域まで足を運んでくれるんです。そして、多くの友人が東北地域に来て驚いていました。『こんな素敵な場所があったなんて、知らなかった』と皆が口を揃えて言いますね。

長瀬) ジェシカさんやGo!Go!Tohoku!!の事業を通じて、海外へ東北地域の魅力がどんどん伝わっているんですね。素敵なお話を聞くことが出来ました。本当にありがとうございました。

ジェシカ ) こちらこそありがとうございました。

 

 

 

profile
ハラムズ・アン・ジェシカさん

オーストラリア・キャンベラ出身
15歳の時、語学留学として初来日。
オーストラリアの大学在学中の3年生時に、金沢大学へ1年間留学。
オーストラリアの大学を卒業した2年後、JETプログラムを利用し日本へ。
2013年から3年間、ALTとして福島県で働く。
2016年からは、宮城県仙台市を拠点とする『Go!Go!Tohoku!!(仙台放送)』のスタッフとして働いている。

Go!Go!Tohoku!!の詳しい情報は公式HPをご覧ください。 公式SNSはこちら Facebook Instagram
(取材:2018年8月)
interviewer
ナガセサクラ(インバウンドNAGASE)

出身地:栃木県那須塩原市
趣味:プロ野球観戦、ライブ
東北の好きな所:楽天イーグルス、美味しいご飯
モットー:腹が減っては戦はできぬ
ひとこと:卒業までに、東北の魅力を知り尽くします!
<編集後記>
少し緊張気味で仙台放送の事務所を訪れると、ジェシカさんがにこやかに迎えて下さいました。ジェシカさんは日本語がペラペラで、また私のつたない英語力は(つたないから役に立つかは怪しいのですが)出番を失いました。ジェシカさんのご出身がオーストラリアということで、私も一度、オーストラリアのケアンズを訪れたことがあったので、オーストラリアのお話で盛り上がりました。私がオーストラリアを訪れたのは中学生の頃なので、もう6年ほど前の話になってしまいましたが。いつかオーストラリアの別の地域も訪れてみようと思います。取材を通して、自分の地元をPRするのも自分の使命かもしれないと感じました。取材にご協力いただいたジェシカさん、関係者の皆様、心から感謝申し上げます。ありがとうございました。