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■ 東北ウーマンインタビュー


心と身体を整えるスペシャリスト

食を通して心と身体を整える
ウエルネスフードデザイナー 斉藤緑里さんインタビュー
宮城県仙台市で“食べものと食べかたを整え、心と身体をケアするスペシャリスト”としてご活躍されている斉藤緑里さんに、食に対する考えやライフスタイル、現在のご職業になられた経緯など、お話を伺いました。
ウエルネスフードデザイナーとは
 
小松 )ウエルネスフードデザイナーという言葉を初めて聞いたのですが、どういったことをされているご職業なんですか?

斉藤 ) ウエルネスフードデザイナーというのは実は自分で考えた肩書なんです。

小松 ) そうだったんですね!由来などはありますか?

斉藤 ) この肩書に変えたのは最近で、前までは野菜ソムリエと名乗っていました。でも自分のやっていることは野菜だけじゃないよなってことに気が付いてからは、ウエルネスフードデザイナーと名乗るようになりました。一昨年くらいにウエルネス研究所というところでお医者様と一緒に心と身体を整えるプログラムの開発を行ったことがあって、私は食(フード)に関する事を担当していたので、“ウエルネスフードデザイナー”と命名しました。

小松 ) 具体的にはどのようなことをされているのですか?

斉藤 ) 私が考えるウエルネスフードデザイナーというのは、食べ物と食べ方を両方整えることで、心と身体の両方を整えていく。例えば、この食べ物が体にいいですと伝えるだけでなく、その食べ物の食べ合わせ方や、栄養素などについてお伝えすることで、心と身体を整える方法をみなさんにお伝えしたりするお仕事をしたいなと思って、このように名乗っています。

小松 ) 食の事だけでなく、心と身体の整え方もお伝えしているんですね。

斉藤 ) 基本的にはお野菜を中心に食生活全体を見ながら、心と身体を元気にしてお家でご飯を作る人が健康的なご飯を作れたら、家族みんなが元気になれるかなって思い、仕事をしています。 持っている資格としては、野菜ソムリエ上級プロがあります。野菜ソムリエ全体で約6万人いますが、野菜ソムリエ上級プロは最上級の資格で、全国でも180人くらいしかいません。あとはアンチエイジングやメンタルヘルスと食についてなど、食に関する資格はいくつか勉強してとっています。

小松 ) 全国でも180人しかいないんですね!とても珍しい資格なんですね。どうしてこの資格をとろうと思ったのですか。

斉藤 )最初にとったのは野菜ソムリエ(初級)で、そこから食べ物関係の資格を取り始めたんですけど、確固たる理由があったからというよりは面白そうだなと思ったのが理由です。野菜ソムリエの資格が2001年にできて…。

小松 )割と最近なんですね!

斉藤 ) そうなんです。私が最初の資格(野菜ソムリエ)を取ったのが2004年で、ある日ボーっとテレビを観ていたら、野菜ソムリエっていう資格があるっていう特集をやっていて面白そうだなと思って。で、その時はまだ始まったばかりだったから東京でしかクラスをやっていなくて、問い合わせてみたら大人気で実際に受けに行くまで半年くらいかかりました。今はそんなことないんですけど。その当時は東京までバスで通いながら資格を取りました。
 
資格取得への道のり
小松 ) 毎回東京まで行かれていたんですね…!資格を取るにはどのくらいの期間かかったのですか?

斉藤 ) 2004年の6月くらいに初級の勉強を始めて、中級(野菜ソムリエプロ)に合格するまで1年ちょっとかかりました。それから何年か資格を活かして仕事をして、最上級(野菜ソムリエ上級プロ)にチャレンジしました。この資格を取ったのが2010年でした。最上級(野菜ソムリエ上級プロ)の二次試験は論文を書いてプレゼンをするという試験で、私はちょっと甘いところがあって、何回も書き直して合格するのに1年以上かかりました。

小松 ) 最上級(野菜ソムリエ上級プロ)はプレゼンをしないといけないんですね。資格を取る時は、当時されていたお仕事の合間にされていたのでしょうか。
 
斉藤 ) 初級にチャレンジしたころはちょうど仕事を辞めていました。ですから時間があったのでやってみたかったなと思っていたことをやってみようと思ったんです。今ならいけるって。あまり休みを取れない仕事だったので。時間と気持ちに余裕ができて、ちょうどそのころ30歳くらいだったんですけど、20代でやってきた事に区切りをつけて、今までやってきたことも生かしつつ、自分でどんなことが出来るのか、世界を広げたいなと思ったんです。

小松 ) 素敵ですね、当時のお仕事は何をされていたんですか?

斉藤 ) マスコミ関係に勤めていました。その頃、農家さんやお野菜や果物の研究をしている研究所によく取材に行っていたんです。新しい品種の取材をして、それをちょっと分けて頂いたりする経験を何回かしていました。その頃のストレス解消法が料理だったんです。今は料理でストレス解消にはならないんですけど。(笑)頂いてきた新品種のトマトとかを使って夜中に料理をしたりするのがすごい楽しかったです。野菜ソムリエの資格を取るまでに3~4年ずれているんですけど、多分こういう経験があったから、テレビで見たとき野菜ソムリエって面白そうだなって思ったんでしょうね。

小松 ) 元から料理とかお野菜についてご興味があったんですね。

斉藤 ) そうですね。今開いているレッスンも、実は知り合いの記者さんの言葉がスタートのきっかけなんです。

小松 ) 自分で開こうと思って開いたわけではないんですね。

斉藤 ) はい。(笑)「リビング仙台」っていう地域の各家庭に配られる情報紙があって、それで取材をしてもらったときに、その記事のコンセプトがこの人の話を聞こうという企画がセットになっていて、必ず講座をしなくちゃいけなかったんです。それで、やったことなかったんだけど、背中を押してもらった感じで、講座で野菜のお話をしました。そうしたら参加してくれた方が「今度はいつあるんですか?」とか「普段どこでやっているんですか?」って聞いてくれて、それでこの教室「Vege-Fru Lesson」を始めました。2006年頃からスタートしてこれまでに500回以上レッスンを行っています。
広がる仕事の幅
小松 ) 500回以上!すごいですね!レッスンはどのような方が来られているのでしょうか?

斉藤 ) 主に主婦の方です。ベテラン主婦の方もいらっしゃって、リピートしてくださる方も多いです。資料も毎回作り直して、最初は時間がかかっていたけど、今では1日で作れるようになりました。

小松 ) 多い方だとどのくらい来られていますか?

斉藤 ) 0回目からずーっと来てくださった方がいました。100回目超えた頃にご卒業なさって、ご高齢の男性の方なんですけど、実は私が大学生時代に教育実習先で校長先生だった方なんです。10年以上経っていたのに、リビング仙台の記事に私が載っているのを見て連絡をくれたんです。それ以来、10年近く参加してくださいました。

小松 ) 昔の知り合いの方から連絡をもらって、10年も通ってくださったなんてとても素敵で嬉しいことですね。学生のころ教育実習をされていたということは、当時は教員を目指されていたのですか?

斉藤 )実はあまり考えずに大学に進学したので、教員になる気はなかったんです。今思えば申し訳ない話ですけど。(笑)だけどそんな学生だったのに、その校長先生はとてもよくしてくれて。 毎回レッスンに来るたび先生がだんだんお料理上手になられて、他の参加者の方とも仲よくされていてみんなから“先生“と呼ばれていました。

小松 )仲の良いレッスンの雰囲気が伺えます。主宰のレッスンのほかにも何かされているんですか?

斉藤 )自分のところで開いている教室のほかに、学校に招かれてお話をしたり、研修会や講演会などでお話ししたりもしています。これも含めるとこれまでに1000回くらい、1万人以上の方にお伝えしています。あとは料理のレシピを写真付きで納品して、いろんなところのカタログや冊子に載せて頂くお仕事も頂いています。こういうのもほとんど相手からお声がけいただいてお引き受けすることが多くて。相手から求められて、それにお答えしていくうちに仕事に繋がっていきました。カメラマンさんに写真を撮ってもらうこともありますが、自分でも上手くなりたくて料理写真の撮り方やスタイリングの仕方などを学びました。

小松 )相手の方からお仕事のご依頼がくるのは嬉しいお話ですね。ほかには何を勉強されたんですか?

斉藤 )アンチエイジングや、メンタルヘルスと食の関係について学びました。野菜だけでなくもっと全体の栄養に関して、さらに心と身体の健康にどう食が関係しているかについて、ですね。自分の中で知識の幅を広げて、さらに深めていった方がよりお役に立てると思って。
 
“食べ物と食べ方を整えれば心も身体も整う”
小松 ) 心と身体を整えることについて、食べ物は具体的にどのような影響を与えているのですか?

斉藤 )普通心と身体が結び付いているって、みなさんなんとなくわかると思うんですけど、食べ物で左右されるってそこまで思われていないと思うんです。例えば、疲れた時に甘いものを食べるとあぁ幸せだなって思うけど、でもこれってちゃんと理論があるんです。鬱っぽくなってしまうことも、それを直す方法も、ある程度食べ物から説明をすることができるんです。こういうことをお伝えして、改善するための知識や環境をつくるお手伝いをしています。あとは頭をよくする食事もあるんですよ。ご年配の方たちのクラスでは、認知症の予防をテーマにしてお話しています。食べ物の知識ってどこでも使えるし、来てくださった方と分かち合うことでお役に立てていると感じています。
小松 ) おいしいものを食べたりすると元気がでるのにはちゃんと理由があったんですね!食についての考え方や大切にしていることはありますか

斉藤 )お伝えしたいのは、“食べ物と食べ方を整えれば心も身体も整う“ということです。基本的には無理のない範囲で近くのものを旬の時期に頂くこと。野菜や果物を中心に、お魚もそうなんですけど、一番の基本はこれです。

小松 ) 東北の食べ物で好きなものはありますか?

斉藤 )お米です。野菜ソムリエと言っていてなんですが。(笑)全てがおいしいんですけど、一番はお米が好きですね。結構古い品種なんですけど“ササニシキ”というお米が好きです。最近だと宮城県の“だて正夢”が好きです。ちょっと変わったお米でおいしいんです。

小松 ) お米のどういうところが好きなんですか?私も結構お米好きでよく食べます。

斉藤 )お米の好きなところは、何と合わせてもおいしいところです。毎日食べたくなるのはお米、ご飯とお味噌汁があれば生きていけます。(笑)
小松 ) 学生時代と今で繋がっていることや、生かされていることはありますか?

斉藤 ) 学生の頃、実は今よりずっと体調が悪かったんです。低血圧で貧血でよく通学の時に倒れそうになっていました。あと便秘もひどくて。当時は正しい食べ物の知識がなくて、こういう風に食べたらいいとか、そういうのって学校の家庭科では教えてくれないので、知識のある今の方が健康です。もしあの頃の自分がいたら、食の大切さを教えたいです。いつ気付いても遅くないけど、若いうちから知っていたら貧血や便秘で苦しい思いをしなかったんだろうなと思います。

小松 ) 私もいつも貧血気味なので、お話を聞いて少しドキっとしました。若さに甘えていてはダメですね。(苦笑)
 
仙台は食に恵まれた土地
小松 ) お仕事に関することは日常的に意識していますか?

斉藤 )食べる事って仕事とプライベートの合間がないので、仕事をしていないときでも常に食べ物の事は考えています。もちろん仕事のレシピを考える時と、今日の晩御飯の事を考える時は違うけど。いろんなものを見ている時や外に食べに行く時に、これ自分なりにアレンジできないかなとか考えたりしています。組み合わせをもっとシンプルにして、自宅で作りやすい方法はないかなって、常にアンテナは張っていまね。
小松 ) そうですよね、ご飯は毎日食べるし日常と切っても切り離せない関係にありますよね。

小松 ) 自然が豊かなこの東北の地だからこそできることや、仙台を中心にして働く理由などありますか?

斉藤 ) 仙台は自分のふるさとっていうのもあるのですが、全国的に見てみたら東北って農産物の生産比率が高くて、いろんなものを全国の為に作っています。自然が豊かで食材が豊富で本当においしいものが沢山あります。その東北の食べ物のおいしさ、食の豊かさの素晴らしさをまずは私たちが大事にして、良さをわかっていないとダメだと思って。東北の人って伝え方が下手というか、自分たちのもの大したことないって思っちゃってる。よく言えば遠慮深いんだけど、もうちょっと自信持っていいんじゃないかって思うんです。

斉藤 ) 宮城県でこういう食に関することをやっていて面白いと思うのは、仙台にいると意外と地産地消がやりやすいんです。100万都市でありながら、野菜とかある程度のものが仙台市場で出回るので、旬のものが比較的手に入りやすいです。お隣の山形県や福島県はフルーツ王国だし、都市生活を送りながら恩恵にあずかれるので、仙台はすごく恵まれていると思います。地域のものを旬の時期に無理なく食べて、心と身体を整えるのにこんなに適した場所はないと思います。全国に野菜ソムリエさんいますけど、私みたいなやり方をできるのは、宮城県にいる野菜ソムリエだからかなと思っています。

小松 )旬のものをおいしく食べられることは幸せなことですよね。ちなみに女性におすすめの野菜などはありますか?

斉藤 )宮城が全国生産量ベスト3に入る、パプリカ。中でも赤パプリカです。身体のさび止めをしてくれる抗酸化力がとても高いので、若々しさを保ちたい方におすすめです。
小松 ) このお仕事をしていてよかったと思うのはどんな時ですか。

斉藤 ) お伝えしたことを自分のものにして頂いて、日々の生活に生かしてくださっていると分かった時です。「野菜の見方を変えると、スーパーに行ったときでも違う視点で見れるようになるし、野菜選びが楽しくなりました。」「お野菜の保存方法を教えてもらった通りにやったら全然違いました。」って言っていただくと本当に嬉しく思います。こういう一つ一つのリアクションが返って来たり、「毎日の生活のクオリティが上がりました」という言葉を聞いたりするから、続けていけるんだと思います。

小松 ) 知識を少しでも知っていたら生活していて気づけることが多いし、“食についての“世界が広がるし変わりますね。
”食”で”伝える”
小松 ) 現在に至るまで様々な経験をされてきたと思います。今も変わらず思い続けていることはありますか?

斉藤 ) 表現の方法は違うけど、何かを伝えることで人の役に立つことをしたいという思いは変わっていません。文字を書いたりお話をしたり、マスコミに務めていた頃と根本的なことは同じで変わってないです。でも昔と違うのはそこに自分のテーマとして“食”というツールがあるということ。小さな頃からやりたかった事を今叶えられていると思います。これからも自分に合うやり方で輝けたらいいなと思います。

小松 )自分の好きなことをツールにして夢を叶えられているなんて素敵なことですね。私も自分が輝けるステージを見つけてお仕事をしたいなと思いました。本日はありがとうございました。

 

≪ 斉藤さんおすすめの自宅で簡単にできるナスのレシピをご紹介 ≫

 

【レンジで作る簡単蒸し茄子】

①茄子は洗ってヘタと先を切り、縦に2,3か所包丁を入れ、ぬれたまま、ラップでしっかり包む。

②電子レンジで加熱する(目安:800wで1分、600wで1分30秒~2分)。ピーとかシューと音がしたら火が通っています。茄子の紫色がきれいな蒸し茄子が簡単にできますよ。

手で裂くか包丁で切って器に盛り、トマトや刻んだみょうがや青じそ(☆冬場はおろした生姜がおすすめ)ポン酢醤油をかけて召し上がれ!

 

 

≪ 美容と健康に良い食事の食べ方のコツ ≫

 

「7色の野菜を食べる!」

赤、オレンジ、黄色、緑、紫、白、黒。この7色を意識して (一度の食事では難しくても)なるべくカラフルに食べるようにする

 

 

 

今回のレッスンで頂いたお料理(左から「蒸し茄子とトマトのポン酢醤油和え」、真ん中「モロヘイヤと桃のヨーグルト和え」、右「莢いんげんのサラダ」)

 

 

“モロヘイヤ”と桃のヨーグルト和え“が、桃の甘さとヨーグルトの酸っぱさがちょうどよく、モロヘイヤの食感がアクセントになっており、とても食べやすく美味しかったです。
profile
斉藤緑里さん
 

大学卒業後、NHK(仙台・盛岡)で夕方のニュース番組のキャスターを7年間務める。
食に関する番組のナレーターを担当したことをきっかけに、生活の基本&文化である“食”に興味を抱くようになり、野菜ソムリエの資格を習得。
その後様々な“食“に関する資格を習得し、ウエルネスフードデザイナー(野菜ソムリエ上級プロ/アンチエイジングプランナー)として、料理教室や出張講座、レシピの作成、コラム執筆、TV番組等多数出演。さまざまなシーンで活躍。

斉藤緑里さん公式㏋ Vege-Fru Lesson

interviewer
小松瑠惟

出身地:北海道網走市
趣味:部屋掃除
東北の好きな所:四季があって桜がきれいなところ
モットー:終わりよければすべてよし
ひとこと:東北の春が大好きです
<編集後記>
今回、取材の前にレッスンに参加させていだたきました。レッスンでは初めに使用するお野菜の栄養のお話や、選び方、保存や調理のポイントなどの説明を受けそのあと実際にその食材を使った料理を頂きました。 終始和やかな雰囲気でアットホームな感じで、リラックスして“食“について学ぶことが出来ました。 斉藤さんとお話して改めて食の大切さ、そして生活を支えている大切なものだと気づきました。これから意識して野菜を食べていきたいと思いました。