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■ 東北ウーマンインタビュー


惚れ込んだ福島の食材を大好きなカレーと一緒に

 

惚れ込んだ福島の食材を大好きなカレーと一緒に
with curry店長
吉川みゆきさんインタビュー

with curryは福島県郡山市に8月にオープンする、福島の食材を存分に使った
あなたを家でひとりにさせないカレー屋さんです。福島の食材に惚れ込んで
岐阜から福島へ移り住んだ店長の吉川みゆきさんに福島の食材の魅力や、
福島県出身の私が知らない、外側から見た福島の良さなど、様々なお話をお伺いしました。

 

魅力的だったスリランカのカレー
 

円谷) 吉川さんは今年8月にカレー屋さんを開かれるとのことですが、カレーとの出会いはどのようなところにあったのですか?

吉川 ) 宇都宮大学国際学部国際社会学科に通っていたんですけど、2018年、大学4年生の時に海外留学しようと思いまして、大学の交換留学制度に申し込んでスリランカに半年間行っていました。スリランカのキャンディという場所で、日本で言うと京都みたいな伝統と歴史のある街にある、ペラデニア大学というスリランカの中だとかなり大きい大学に留学していていました。そこでは、農業経済のようなものを勉強していたんです。スリランカで半年間ホームステイみたいな感じで生活している中で、向こうの方々は食事がもう朝昼晩ぐらいでカレーなんですよ、だから毎日どころじゃなく毎食カレーを食べるみたいな生活をしていました。

円谷 ) スリランカってカレーが主食なんですね!

吉川 ) そうなんです。スパイスカレーというか、全部スパイスカレーなんですけど、日本みたいに塊のルーで作るものではなく、いろいろ野菜なりお肉なり、チキン、ビーフ、お豆だったりカボチャだったり、ジャガイモだったり、オクラだったりをとにかくスパイスで煮込んだら、それがカレーみたいな感じだったので、そこで自分の中のカレーの概念みたいなものが変わりました。それのカレーが、いろんな種類があって飽きなかったのと、基本的に小麦粉を使っていないので、お腹も重くならず、スパイスの薬膳効果みたいなもので体調が改善していたんです。スパイスカレーって美味しいし、体にもいいし、なんかいいなぁみたいな。毎食食べても飽きないし、これはいい!っていう感じで、すごく好きになって。それが出会いですね。

円谷 ) そうだったのですね!スリランカにいた時に一番好きだったカレーってありましたか?

吉川 ) そうですね、種類でいうとナスのカレーがすごく好きだったんですけど、大学の学食で出ていたもので、結構辛めなんです。でも、ナスのカレーと言っても日本みたいにひき肉とか他の野菜とか全然混ざっていなくて、本当にナスオンリーがスパイスで煮込まれたような。炒め煮みたいな感じですね、それがすごい美味しかったです。あとホームステイ先のスリランカ人のおばあちゃんが作ってくれるチキンカレーが辛くて美味しかったです。
円谷 ) 聞いているだけでとても美味しそうです!

 
 
人と人とつなぐ食
 

円谷 ) クラウドファンディングのページを読ませていただいたのですが、そこに書いてあったカレーの包容力とはどんなところですか?


吉川 ) スリランカにも、インドにも、日本にも、ヨーロッパにも、アメリカにもカレーってあるんですけど、どんな国の人でもどんな地域の人でもカレー嫌いな人って多分あんまりいないと思うんです。どういう文化、背景のなかで育ってきた人でも、まずみんなで囲んで楽しめるという意味での包容力とか。あとは、一個の鍋に具材を入れたらお肉でも野菜でも絶対カレーにならない食材ってあんまりないんじゃないか、と思っていて。お鍋でスパイスと一緒に美味しくコトコト煮込んだらカレーになるんじゃないかというところですね。まずく作ることが難しいというか、とりあえず絶対美味しくなるというところにとても包容力と魅力を感じています。また、カレーってキャンプとか遠足とかでもよく作ったり家庭でも給食でもよく出たりすると思うんですけど、カレーを囲んでいるとあんまり知らない人がいても仲良くなれたり、元気ない日もみんなでカレーを囲んでちょっと元気が出たりするじゃないですか。そういう自分の中での体験がそのままカレーに対しての気持ちにつながっているかなと思います。


円谷 ) そういう気持ちからカレー屋さんを開こうと思いついたのですか?


吉川) 私自身最初こちらに就職を決めた今年の4月で、カレー屋さんをやるとは微塵も思っていなかったんです。オフィスが郡山駅の近くにあるんですけど、三階建の建物で、一階がオフィスで2階と3階に人が泊まれるようになっているんですね。それでゲストハウス事業的なものをやりたいということで1階のキッチンをオープンにしているんです。そこで、ご飯会をやったりとか、外から知り合いとか友達の友達とか、郡山に遊びにきた人が泊まれるようなゲストハウスにしたりという事業を担当する予定だったんです。けど、4月からコロナウイルスの影響で、なかなかシェアハウスもご飯会もやるのが難しいという状況になりました。

円谷 ) 福島に来てすぐコロナウイルスの影響を受けてしまったのですね。

吉川) そうなんです。その時に、うすい百貨店というデパートの飲食店のテナントが1つ空くというお話を、レシピ監修をしてくださっている中田智之さんに繋いでいただいて。それで、飲食事業をやるなら何をしようという話になった時に、新卒でやることがなくなった私が、カレーがめちゃくちゃ好きという状況で。「じゃあ、みゆきがリーダーでカレー屋さんやってみる?」という話になり、そのままここまで来たという感じですね。

円谷 ) そうだったのですね!実はこの間うすい百貨店の前でお店を見かけました!その時は食べることができなかったので、オープンしたら食べてみたいです!

吉川) えー!そうだったんですか!?ぜひ今度来てください!

円谷 ) ありがとうございます。

 
食べることは生きること
 
円谷) 食を通して学んだことについてお聞きしたいのですが、福島の野菜や、スリランカなどで食べたカレーも含めてみゆきさんにとって食べることとはなんでしょうか?

吉川 ) これはいつも言っていることなんですけど、「食べることは、生きること」ですね。これまでも、すごい忙しかったり、すごい嫌なことがあったり、喧嘩したり振られたりとかしても、とりあえずちゃんとご飯を食べてちゃんと寝ていればなんとか生きていけるという感じだったんです。なので、ご飯食べるのは基本中の基本でありながら、すごい至福の時間だと思っていて。もちろん生きるために欠かせない生命活動でもあるんですけど、実際自分が食べたもので自分の体が出来ているし、物理的に体が出来ているということじゃなくて、食べるものとか食べる場、一緒に食べる人とかで精神的にも自分は形成された部分が大きいなと思っています。そういう意味を含めて食べることは生きることだと思っています。

円谷) 今まで食べることでたくさん救われてきたんですね。今まで食で成長できたとか、食を通して助かったな、嬉しかったなと思う機会はどんなことがありましたか?

吉川 ) そうですね、実家のご飯で、お母さんの作るご飯がすごく好きだったのが1つ大きいです。他に何かエピソードとしてあげるとしたら、スリランカの留学中の話なんですけど、スリランカって日本と違ってめちゃくちゃルーズなんですね。私は9月から新学期が始まる予定でスリランカに出発して、到着したんですけど、三日後ぐらいに授業が始まる想定で学校に行ったら、「先生たちのストライキが起きているから来月まで始まりません!」って言われて。すごいびっくりするじゃないですか。(笑)「大学行くために来たんだけど、じゃあ何をすればいいの?」みたいな。それで、結局来月初めになっても始まらず、最初の1ヶ月くらい空白だったんですね、スリランカで突然。

円谷 ) そんなことがあったんですか!?

吉川 ) そうなんです。(笑)それで、学校行かないってことは友達も出来ないじゃないですか。本当にひとりぼっちで、異国の地で何しよう、みたいになって。朝からなんの予定もない、というのがずっと続いていたんですよ。その間、人と話す機会も外に出ないと無いしで、病みそうになりました…。その時に、ホームステイしていた先のおばあちゃんとおじいちゃんが毎日カレーを作って出してくれていたんです。留学中は、それを一緒に食べる時間に助けられていましたね。自分と同世代の友達は大学に行かないと出来ないので、知り合いが誰もいない状況だったこと、それが一番辛かったですね。おばあちゃんがカレーを作ってくれて、一緒に食べようって言って食べている間にいろいろ喋ったりとか、明日はどこ行くのみたいな話をする時間に助けられたりしていたので。それがカレーだったというのもすごく大きいですね、with curryになったのは。

円谷 ) ホームステイ先で食べたカレーにとても助けられていたんですね。
 

 

チャレンジへの原動力
 

円谷 ) イベントやインターンで一度郡山市に来たことがあるとおっしゃっていましたが、新しい土地に来ることってすごく勇気がいることだと思いますし、チャレンジするというのも大変だったと思います。そういう時にもカレーや、好きな食べ物に支えられていたのですか?

吉川 ) そうですね、それはすごくありましたね。ただ、新しい場所に行くことに対してすごくハードルが高いかって聞かれるとあんまりそうではなくて。岐阜県の下呂市というすごい田舎の本当に山奥みたいなところで育って、高山祭とか、「君の名は。」とかで有名な飛騨高山の高校に通って、大学は栃木県に来て、就職で福島県にいるんですけど、節目節目で高校どこ受けよう、大学どこ受けよう、就職どこにしようという所で、やっぱり毎回基準になっていたのが、“自分が全然知らないところに行ってみたい、なるべく遠くに行きたい”みたいなのがずっとありました。なので、結構自分にとって新しい場所に行くことは楽しいことでしたね。

円谷 ) そうなのですね!

吉川 ) 新しいところに行くこと自体が怖かったとかはそんなに無いんですけど、今回のコロナウイルスが新卒直後にあったのは自分の中では大きくて。やることが見えない状態が、すごく怖いというか。なんか自分のここにいる意味を見出せなくなるじゃないですか、全然やることがないと。そんな時期もあって、この先、会社どうなるんだろうとか、日本全体どうなるんだろうとか、心配もやっぱりありました。自分がやろうとしていた事業が出来なくなったけど、これからどうやって働いていこう、みたいなのもすごくありました。

円谷 ) コロナウイルスで不安になってしまうのは、とてもわかります。

吉川 ) そんな時に、私の会社では毎日みんなでご飯を食べるんですけど、その時間に救われた感覚は多分私ももちろんだし、会社内のメンバー全員あったんじゃないかなと思います。5人の小さい会社プラス、インターンシップ生が1人いる状態(2020年7月25日現在)なんですけど、迷ったけど一度も自宅勤務にはせずに、コロナの期間中もとりあえず出勤して、5人しかいないので密にならないように距離を取りながらオフィスでみんなと仕事して、みんなでご飯を食べていました。先行きの見えない不安とか、なんとなくみんな暗いみたいなのがあるじゃないですか、コロナの期間中って。そういうものに負けそうになるんですけど、とりあえずみんなでご飯食べる時間だけは守ろうっていうのでやっていたので、その時間にやっぱりカレーの話が出たりとか明るい方向に持っていくような話題も食べている間に生まれたりとかして、そういう面ではすごくご飯に助けられたなと思っています。 

 
 


円谷 ) 人と食べるご飯ってすごく美味しいというか1人で食べるよりも誰かと食べる方が楽しいな、と思うのはとても共感です。

円谷 ) もしあればなのですが、カレー以外に元気になる食は、あったりしますか…?

吉川) 元気になる食かぁ。何を食べるかってより、やっぱり誰とどういうシチュエーションで食べるかが大きいというか、ほぼそれだと思っているので。これっていうのは特にないけど、好きなもので言えば、餃子がすごい好きです。

円谷 ) そうなのですね!

吉川 ) カレーも好きなんですけど、餃子も好きです。あと焼き鳥も好きです。

円谷 ) 餃子と言ったら(吉川さんの卒業した大学のある)宇都宮ですもんね。

吉川 ) 実は餃子にハマったのは大学の在学中っていうわけでもなくて、本当に卒業ギリギリの時に目覚めて。郡山の駅前にも実はとても美味しい餃子屋さんがあって。いろんな人に聞かれるたびに、いつも推しているんです。

円谷 ) 今度行ってみたいです。

吉川 ) 餃子もなんか似ているんですよね、包む所が。感覚なんですけど、カレーは鍋で包むけど、餃子は皮で包むって感じというか、具が何であってもいい感じなので、そこはなんとなく共通点かもしれないです。カレー屋じゃなかったら餃子屋がやってみたいです。

 
人と人とつなぐ食
 

円谷 ) お店の名前がwith curry(ウィズカレー)ということなのですが、この名前にした由来や意味はなんだったのですか?


吉川 ) with curryにした由来の1つ目が、今「あなたを家で1人にさせない」というコンセプトでやっているんですけど、誰かと一緒に食べるカレーというのを重要視していて。今、コロナウイルスで人とご飯を食べる機会って減っちゃっていると思うんですけど、そんな中でもwith curryに来てくれた方が、もちろんお店でもスタッフと会話を楽しみながらカレーを食べられるし、家にテイクアウトして持って帰ったとしてもインスタライブ配信で同じカレーを同じタイミングで食べられるというサービスをすることにしています。私自身が、新卒で福島に来て一人暮らしをしているんですけど、来てすぐコロナだったのでなかなか友達と外食とかも行けなくて家でちょっと寂しい思いをしていたこともあって、「誰かと一緒に食べるカレー」というのが1つ目の意味になっています。

 
 

 

吉川)もう1つは、先ほどカレーの包容力のお話をしたんですけど、カレーって本当に食材とか地域とか文化とか関係なくいろんな人が楽しめるものなので、何かいろんなものとコラボしたいなというのがあります。例えば、バーベキューをみんなでやる、バーベキューwith curry。猪苗代湖でバーベキューをして、そこでカレーを一緒に食べようとか一緒に作って食べようとか。あとは日本酒with curry。私達の会社エフライフで、カレー屋さんの他にすでにある事業として、「SHOKU SHOKU FUKUSHIMA」っていう日本酒飲み放題のスナックをやっているんです。福島県内の日本酒、酒蔵さんを一件ずつ取材して、そこのお酒とそれにあうおつまみを毎月宅配で届けるというサービスのお酒を置いているスナックなんですけど、それでこっちに来て日本酒にハマったんです。日本酒とカレーって実は合うんですよね、これが。なので、日本酒と絡めたイベントが出来たらいいなぁとか、それ以外にもいろんな農家さんとコラボして福島県内の食材を使ったカレーを新しく開発したいな、とか。そういう食べ物だけじゃなくて、音楽とか服とかもカレーコラボ出来たら楽しいんじゃないかな、という夢があるので、その辺の意味も込めて、withの前に何かが入るという想定で、〇〇with curryという感じからwith curryにしています。

円谷 ) そうなんですね。現在は、カレーのメニューなどを作っている最中だと思うのですが、カレーを作る時に大切にしている事はなんですか?

吉川) そうですね、まずは愛情を込める事ですかね!あとは使っているものはなるべく県産のものを使いたいので、今三つメニューがあるんですけど、ビーフカレーは福島牛を使っていて、ひき肉を使ったココナッツキーマカレーは福島県の豚肉を使っています。バターチキンカレーには、伊達鶏を使っています。でも野菜はどうしても季節とか旬があるので全部県内産で揃えることはちょっと難しいんです。でも、サラダの方は福島県の大槻町にある鈴木農場さんという農家さんから仕入れています。レシピ監修をしていただいている中田シェフもお店でよく出している野菜を作っている農家さんなんです。郡山ブランド野菜って知っていますか?

円谷 ) 聞いたことがあります!

吉川) クラウドファンディングのページにたくさん載っているんですけど、毎月一品種ずつ何百種類もある中から農家さん達がグループで育てて、郡山の土地にあっていたりだとか、味とか栄養価のバランスを見て年に一つこれが一番だというのがブランド野菜として登録していっているんです。そのブランド野菜の協議会を引っ張っている農家さんが鈴木農場さんなんですね。3代目がお父様で、4代目の智哉さんという方が、私と同世代ぐらいの若い農家さんなんですけど、その方からサラダの野菜を仕入れさせていただいていて。なるべく知産知消(知っている人が作ったものを知っている人が食べる)のもので出来るというものですね。あと、作ることで現実的に意識しないといけないことは、絶対に焦がさないことですね(笑)。ずっと見ていないと、焦げた時点で3時間ぐらいがパーになるので…そういうことが何回かあったんですよ。

円谷 ) そうなのですね。カレーを作る過程で、たくさんの愛情が込められていることも大変だということもすごく感じました。

円谷) 福島の野菜とかお肉とかを主に使っているのは福島の食材が好きだからなのですか?

吉川 ) そうですね。自分が食べて、やっぱり感動するぐらい美味しかったのでそれをもっといろんな人に食べてもらいたい、意識してもらいたいというのは一番にありますね。

円谷) 福島の食材への愛、とても伝わってきます!

 

 
 

 

円谷 ) これからオープンということで20時のカレーガールとして今後目指していることはありますか?

吉川) 0時のカレーガールとして、ですか(笑) とりあえず、お店としては味が美味しいカレーを出したいっていうのはもちろんそうなんですけど、それ以上に人に会いに来てもらえる場所になったらいいなと思っています。今日もちょうどスタッフ募集のカレー会をしていたんですけど、私だったりとか、働いてもらうことになるスタッフの子と会ったりとか喋ったりを楽しんでもらえるようなお店になったらいいな、というのが今の願いですね。私自身が大学の時そういう場、例えば喫茶店やご飯屋の店主さんと仲良くなって、よくお喋りしに行っていて。そういう場所に助けられていたっていうのもあるので、with curryも誰かにとってのそういう場所になれたらな、というのはすごく考えますね。

 

円谷 ) そういう場所があるのってとても青春という感じがします。

吉川) あとはやっぱり、自分が県外から来て、福島の食べ物が美味しいのはもちろんなんですけど、それを作っている農家さんだったりとか料理してくれている中田シェフだったりとか、料理人の方の生き方とか働き方とかにすごく感動した部分があるので、そういうのもやっぱりwith curryを通して知ってもらいたいです。なので人推しですね、with curryは。いろんな人に出会える場所になったらいいなと思います。

円谷) すごく素敵ですね。先ほど好きだとおっしゃっていた、餃子とカレーでコラボしたいな、とかはあるのですか?

吉川 ) そうですね、やってみたいですね。実際餃子カレーってものがあるのか調べたんですけどありましたね(笑)。ですが、いつかwith curryでもやってみたいですね。

円谷 ) 餃子with curry、とても美味しそうです。ぜひ食べてみたいです!

吉川 ) 自分が好きだからやってみたいですね。

 
食に関わる熱意
 

円谷 ) 食を通して出会った方ってたくさんいると思うのですが、そういう方々から学んだことってありますか?

吉川 ) そうですね、たくさんあります。食に関わっている人たちから、働き方みたいなことを学びました。自分自身が大学を1年間休学して5年間通っていたんですけど、大学4年目のインターンってすごい就活目前の時期で。その時は自分には何が向いているんだろうとか、何が好きなんだろうとか、どういう会社入ろうとかそういうことを悶々と考えていたんですけど、そういうのって悶々と考えていたって見つからないことじゃないですか、だから就活どうしようと。今までが割と広く浅い感じで、なんにでも興味あるけど、特にこれやりたいというのがなかったので、結構迷っていたんです。

円谷 ) そうだったのですね。

吉川 ) でもその時に福島に来て、食に関わる仕事をされている方にたくさんお会いする中で、働いている方に格好いい方が多かったんですね。こういう風に生きられたらすごい格好いいし、自分も絶対楽しいって思ったんです。なんで、こんなに格好良くて楽しそうなんだろうって考えた時に農家さんは、育てているのがトマトだとしたら自分が作るトマトに対してみんな激アツなんですよ。農業って毎年雨の量とか雪が降るかとか暑い時期とか変わるじゃないですか。それで、毎年条件は違うけどクオリティとして同じ味のものを毎年出さないと消費者には買ってもらえないわけで。だからそこに対していつもいつも初心で向き合っている姿勢とか、農家とか土とか野菜が好きなんだなっていうのが伝わってくる働き方をしている人が多かったんですね。

円谷) 毎年違う環境の中でも同じクオリティの食材を提供できる農家さんって本当にすごいですよね。

吉川 ) そこで自分は就活って考えた時に何の仕事が向いているんだろうという考え方をしていたんですけど、多分何の仕事でも良くて、その仕事をどういう気持ちでどういう風に向き合ってやるかで、その仕事にして良かったかって決まるんだなっていうのをすごく感じましたね。それはもちろん農家さんだけじゃなくて、市役所勤務の方やサラリーマンの方とか色んな方にお会いする中で気付いたことではあるんですけど、自分が関わって一番印象に残っているのって食に関わっている人たちなので。農家さんだったり、シェフだったり。働き方や生き方のビジョンみたいなものとか、何を大事にして生きていけばいいんだろうとか、そういうことを学びましたね。

円谷 ) そういう食に関わる人が印象に残っていたっていうのはやっぱり食が大好きだったからですか?

吉川 ) そうですね、それは大前提です。

円谷 ) 食べることが本当に大好きなんですね!とても素敵です!

 
 
福島の食材の良さを知って欲しい
 

円谷)吉川さんは岐阜県から東北に移り住んだということだったのですが、福島県と岐阜県の違いや良さはどういうところに感じましたか?

吉川 ) 自分自身、野菜何が美味しいとかって多分岐阜より福島の方が詳しくて。逆に地元の岐阜に18歳まで住んでいたんですけど、あんまりそういうことに高校まで目を向けなかったので。自分のいる環境を当たり前だと思っちゃっていたし、今思えばあり得ないぐらい自然に囲まれていたし、すごい美味しいものも食べていたし、でも実はあんまり岐阜のこと知っていなくて。だから比較って言われるとうまくお話できるかわからないんですけど、福島に来て思うのは、いいものを持っていたり、作っていたり、食べていたりとかするのに、無自覚だったりとかして。私が岐阜に対してそうなので気持ちはわかるんですけど、あんまり自分たちが飲んでいるお酒がどれだけ美味しいかとか、食べている野菜がどれだけレベルが高いか、とかに特に気がついていない方が多いなっていうのはすごく思いますね。それは良いとか悪いとかじゃないんですけど。

円谷 ) 言われてみたらそうかもしれないですね。

吉川 ) だからすごい「知って欲しい!自覚して欲しい!気づいて欲しい!」みたいな気持ちがすごくあって。さっきお話した「SHOKU SHOKU FUKUSHIMA」も、このwith curryも、もちろん県外の方に魅力を伝えたいっていうのはあるんですけど、福島に住んでいる人に自分たちが持っているものの良さを知って欲しいっていう部分もすごく大きいです。福島の方って遠慮するというか、PRとかガンガン良さを発信するみたいなのがあんまり上手じゃないみたいな感じがしていて。だから、全然力不足ではあるけどそこを私がやりたくなるというか。それこそ栃木にいる友達とかに「めっちゃ美味しいんだよ!」とかよく喋ったりもしているし、じれったくなったりする時もありますね。こんなに良いんだから自慢すればいいのに、福島なんもないとみんなが言うから、なんかもったいないな、というか。逆に言ったらすごい可能性があるなと感じますね。

円谷) 福島のものをそういう風に思ってもらえて嬉しいです。福島県の食材とか、日本酒とかたくさん口にしていると思うのですが、全部含めて吉川さんが福島のもので1番好きなのはなんですか?

吉川 ) 難しい質問ですね…。1番衝撃を受けて他に比べて断然美味しくてびっくりしたのは、やっぱり野菜ですかね。キャベツの芯の話が長々とクラウドファンディングのページに載っているんですけど、ものとかお酒も美味しいし大好きですし、多分他の県でも(野菜が)美味しいところは美味しいんだと思うけど、ただのキャベツとか人参とか玉ねぎとか普段食べている野菜のクオリティがここまで高いって言うのが1番衝撃だったので、1番と言ったら野菜ですね。

円谷 ) そういう気持ちがあったから野菜をメニューにたくさん取り入れようと思ったのですね。

吉川 ) そうですね、それはすごくありますね。

 
 

 

円谷) 最後になりますが、これからオープンという事で、今はオープンに向けてコラボとかをしている時期だと思うのですが、これからカレー屋さんとして東北や福島をどうしていきたいとか広めていきたいと思っていますか?

吉川 ) オープンは2020年8月20日になりました。そうですね、そこまで壮大なことは考えてはいないんですけど、福島で言ったら県内の人に福島ってこんなに良いんだよみたいな、こんな遥か彼方の岐阜から急に新卒で移住してくるぐらいの魅力に溢れているんだよ、というのを県内の人に知ってもらいたいっていうのがありますね。with curryは、どんどんいろんなものとコラボしていきたいので我々with curryが名物になったら嬉しいです。あと今は福島県の食材、郡山の食材とかでやっているんですけど、それを県外まで広められたら面白いなと思いますね。あと、これは実現可能性とか置いておいて、ただの夢なんですけど、友達でキッチンカーを持っている事業の子がいて、そんな感じでスパイスだけ乗せてキッチンカーで旅しながらご当地のもので作るみたいなことができたら絶対楽しいだろうなって、それが東北でできたらすごく良いですよね。すごい夢ですけど。

円谷 ) その土地の食材などで作ったら、とても楽しそうですね。

吉川 ) そうですね、その時はぜひお手伝いに来てください。

円谷 ) ぜひその際は私も呼んでいただきたいです。本日はありがとうございました!

 
( 撮影 : 齋藤優有 )
 
 
≪with curry≫
 

 

 

福島の食材とカレーに惚れ込んだ吉川さんが店長を務める、

あなたを家でひとりにさせないカレー屋さん、with curry。

2020年8月20日に郡山市のうすい百貨店地下1Fにオープン!!

OPEN 10:00 ~ CLOSE 19:00

定休日:なし

Facebook Instagram をご覧ください。

 

profile
吉川みゆきさん
 
 

岐阜県出身

大学4年生の時に郡山市で開催されたキャベツの芯の美味しさに感動する。

その後留学したスリランカで、カレーが大好きになる。

帰国後は福島の人と食の良さが忘れられず、福島県郡山市の株式会社エフライフに就職

本日2020年8月20日にwith curryオープン。

 

interviewer
 
円谷萌々香(趣味たくさん円谷)


出身地:福島県須賀川市

趣味:カメラ、読書、古着屋探し

東北の好きな所:空気とご飯が美味しいところ

モットー: どんなことも楽しむ

ひとこと:東北6県旅行したいです!


<編集後記>
 

コロナウイルスの影響で実際にお会いできず、zoomでの取材となってしまったのですが、画面越しに吉川さんの素敵な人柄や、カレーと福島の食材への愛がひしひしと伝わってきました。私自身福島県に18年間住んでいるのですが、私も知らない福島の食材の魅力を知ることが出来ました。新卒でこの土地に来てコロナの影響を受けつつも、カレーを通してたくさんの人に元気を与えようとしている吉川さんを見て、勇気をもらいました。オープンしたら早く吉川さんのカレーを食べに行きたいと思います。そしてこれからどんな〇〇with curryが見られるのか、今から楽しみで仕方ないです!


取材にご協力いただいた吉川みゆきさん、本当にありがとうございました。