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■ 東北ウーマンインタビュー
地元を愛し、地元で働く女性運転士が語る三陸鉄道とこれからの復興
地元を愛し、地元で働く女性運転士が語る三陸鉄道とこれからの復興
三陸鉄道運転士 宇都宮聖花さんインタビュー
岩手県大船渡市 盛(さかり)駅と釜石市の釜石駅を結ぶ南リアス線と、岩手県宮古市の宮古駅と久慈市の久慈(くじ)駅を結ぶ北リアス線がある。2019年3月には三陸鉄道南リアス線の盛から久慈まで一本で繋がる。
宇都宮 ) 高校生の時に進路を考えるにあたって、その頃東京に行く機会が多かったんです。都内の電車などを利用して電車の利便性に感銘を受けて将来は鉄道会社に就職したいと思うようになりました。鉄道会社に就職するのであれば、運転士になりたいなと思うようになったのがきっかけです。
千葉 ) 宇都宮運転手は最初に西武鉄道にいらっしゃったとお聞きしたのですが、なぜ三陸鉄道に就職したのですか?
宇都宮 ) 地元が宮古市で、高校生まで宮古で暮らしていました。3年間の東京生活の中で、親のありがたみを知り、また地元で親と暮らしたいと思ったため、地元に戻ろうと決意しました。
また、地元に戻ってきたのが震災から5年目の節目だったこともあり、微力でも復興に貢献できればという思いもありました。地元に戻って仕事をするときに何の仕事をするか考えたとき、「やっぱり自分は鉄道に関わる仕事がしたい」という思いはずっと変わらなくて。
「地元に戻っても鉄道会社で仕事ができたらいいな」ということが私の一番の願いでした。それを考えたとき、この三陸鉄道の運転士候補生を募集していることを偶然知ったことがきっかけで三陸鉄道に入社しました。地元の良さも大人になって外に出てから分かってこともたくさんあって、高校生のときは「宮古は田舎だし、何もないから早く出たい」としか思っていませんでした。3年間外に出てみて「地元ってこんなにいいところなんだな」と改めて気付かされた部分も多かったです。
千葉 ) 「地元ってこんないいところなんだな」とおっしゃっていましたが、宇都宮運転手が思う、宮古の良さは何ですか?
宇都宮 ) やっぱり都会と比べると空気がクリアで、水もおいしいし、食べ物も海の幸だったり山のものだったり美味しいものがすごく多いところです。海も山も近いので新鮮なものが食べられるし、海などの観光資源もたくさんあって。今までは当たり前に見ていた風景だったけど改めて都会から戻って来て見ると、また少し違う景色が見れたりして、改めて良いところだと実感します。
南リアス線 陸前赤崎(りくぜんあかさき)駅
南リアス線 甫嶺(ほれい)駅
大沢橋梁
北リアス線 一の渡(いちのわたり)駅
宇都宮 ) 私がいちばんに心掛けていることは、列車を運転している中で「お客様に良い乗り心地で目的地まで乗っていただくか」ということです。ただ運転して駅に止まるということではなく、それにプラスアルファして、車体が揺れないようにするためにスピードを出し過ぎないことや、立って乗っている方がバランスを崩されないように止まるときに衝動がないようにすることなどを心掛けています。やはり、乗り心地というのは乗務する中で日々気を付けていることです。お客様に優しい運転がしたいな、というのは毎日思っていますね。
千葉 ) お客様への気遣いを大事にされているのですね。では、運転士をやっていてよかったことはなんですか?
宇都宮 ) 1日が終わって何事もなく戻って来れれば安心感や達成感があります。毎日利用される方もいらっしゃいます。その方たちと顔見知りになり、会うたびに話しかけてくださったり世間話してくれたりすることも多いです。お客様とのふれあいが出来るということはローカル線ならではだと思いますし、お客様とのふれあいの中で「頑張ってね」と声を掛けてくださったり、お褒めの言葉をいただいたりします。やっぱりありがとうと言ってもらえることがいちばん嬉しいですね。そのようなときに運転士をやっていて良かったと感じます。
千葉 ) 地元の方との繋がりを大事にされてるということですね。
宇都宮 ) そうですね。
宇都宮 ) やっぱりデビューしたばっかりのときはそういう方もいらっしゃいましたね。最近はデビューしてから半年少し経ったので、だいぶ最初よりは落ち着いてきました。
千葉 ) 私もニュースを観て初めて宇都宮運転士を知って、すごいかっこいいなと思いました。この東北ウーマンの取材の話が出たときも「絶対宇都宮運転士のことを取材したい!」と思ってたので今日取材が出来て嬉しいです!
宇都宮 ) ありがとうございます。
千葉 ) 宇都宮運転士のポスターとかもすごくかっこよかったです!
宇都宮 ) 自分では少し恥ずかしいです。(笑)
宇都宮 ) そうですね。被災地として三陸鉄道ってやっぱり全線運転再開するにあたっても今まで全国とか日本に限らず海外からもたくさん支援して頂いたおかげでここまで元の状態に復興できて、自分も当たり前に運転することができてるので、これからは支援してくださった方々に恩返しをする番だなって思っています。私が地元に戻ってきたいと思った理由の1つとして、震災の復興に少しでも携わりたいなっていう想いがあったんですけど、運転士として直接的に震災の復興に携われるかって言ったら分からないんですけど、私たちができるのは地元のお客様に乗って頂くのはもちろん、観光でいらしたお客様に乗って頂いて色々案内とかできる限りのことをして、帰ってもらう時にはまた来たいなって思ってもらうことだよなって。会社と沿岸の地域を盛り上げていくのも三陸鉄道の役目なのかなっていう風に思っているので、全国からいらっしゃる方々に対するおもてなしを通して少しでも復興に繋げられたらいいなって思ってます。
千葉 ) 日々の常務の中で復興しているなと感じるところはありますか?
宇都宮 ) 目に見えて復興が進んでるなっていう風に思うのは、新しい建物だったり今ここも市役所を作ってるんですけど、新しい道路が開通してたり通る線路からの道からも色々見えたりとか、目に見える復興というものはそこそこ進んできてると思います。でも住んでる人たちとか被災された方々の心の復興がどうなのかなっていうので、そういう意味でさっきも言ったように地元を盛り上げれたらなっていう風に思います。
千葉 ) 三陸鉄道の魅力って何だと思いますか?
宇都宮 ) なんだろう…田舎なんで(笑)各駅で時刻が決まってまして、おじいちゃんおばあちゃんが多いので足が悪かったり、ゆっくり動かれる方が多いんですよね。たぶん都会だったら次から次に列車が来るので人を待たないで行くと思うんですけど、ここは次逃したら1時間2時間後になっちゃうので。そういうこともあって、お客さんを待ったり鉄道会社なので時間に縛られてますけど、お客様のことを考えた時は結構お客様に合わせてゆっくり降りるときに手伝ってあげたりとかもします。やっぱり都会の鉄道会社にはないことだから地元に根付いてるというか、地元のお客様を大事にしてるのが三陸鉄道の良い所かなって思います。
千葉 ) 東北で働くことについてどんな想いがありますか?
宇都宮 ) そうですね。やっぱり私が東京の方から戻ってきた時がちょうど震災が起きて5年目になった年だったんですけど、震災から5年目ってある意味節目みたいな時で、その時に自分も復興に貢献したいなっていう想いがあって戻ってきたんです。地元の鉄道会社に就職して今こうして目標にしてた運転手ということで仕事ができてるんですけど、東北っていう広い目で見れば、やっぱりこの震災で被災してそれぞれの地域である程度復興が少しずつ進んできてると思うんですけど、それも全国の方々や海外の方々からの支援があってここまでくることができました。東北に住む1人として東北出身の1人として、これからは支援して頂いた分恩返しを何かしらの形で仕事しながらでもできればいいなっていう風に思ってます。あとやっぱり震災っていうものが年月経って遠くに住んでる人とか忘れかけてるかもしれないんですけど、そういうものを忘れないで頂きたいので風化させないように観光でいらした方にも伝えながら仕事をしていきたいです。
千葉 ) 今後の三陸鉄道の発展について考えていることがあれば教えて欲しいです。
宇都宮 ) 今、宮古―釜石間がJR山田線の区間なんですけど、そこが来年の3月に再開して三陸鉄道南リアス線の盛(さかり)から久慈(くじ)まで一本で繋がるんです。そういう意味で結構三陸鉄道も新たなスタートも控えてるし、2020年の東京オリンピックとかもあって関東の方だけじゃなくて東北の方にもいろんな国の方々とか観光でいらっしゃったりすると思っています。三陸の良い海の景色そのままを観て楽しんで頂いて、おいしいものを食べて、また次も来たいなって思ってもらえるような案内とかそういうものをできればいいなって思っています。
現在の南リアス線10駅・北リアス線17駅に、新たに釜石-宮古間の11駅が加わり全40駅での運行が始まります。当日の3月23日は記念列車が2往復臨時列車として走ります。
また、リアス線1日フリー乗車券(リアス線が1日乗り放題)やリアス線片道途中下車切符、南リアス線・北リアス線で好評発売中の日帰り温泉プラン「湯ったり日帰りきっぷ」の新商品などが登場予定です。お得な切符でリアス線の旅に出かけませんか?
平成6年8月生まれ
宮古市出身
H28年4月~ 三陸鉄道株式会社運転士候補生として入社
(現在は運転士として活躍中)
<趣味・好きなもの>
犬、猫が好き
一眼レフカメラで沿線の風景や鉄道を撮影することが好き
鉄道(もちろん三鉄も)大好き
<セールスポイント>
やると決めたら最後までやり抜けるところ
三陸鉄道公式HP: http://www.sanrikutetsudou.com/
(取材:2018年6月)
また、今回初めて宮古に行ったのですが、宮古駅前にいたおばあちゃんに「こんにちは」と声を掛けられてとても温かい気持ちになりました。また宮古に行きたいと心から思います。