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■ 東北ウーマンインタビュー


人生の節目をサポートする身近な存在

 

人生の節目をサポートする身近な存在
山形県司法書士会副会長 早坂智佳子さんインタビュー

山形県新庄市で開業している司法書士の早坂智佳子さんは、山形県司法書士会副会長、日本司法書士会連合会広報委員も務めています。司法書士になったきっかけや実際のお仕事、ライフスタイルについて等、お話をうかがいました。
なりたくなかった司法書士の道へ
滝口 ) 早坂さんが司法書士になったきっかけはなんですか?

早坂 ) この仕事は実は私で4代目なんです。ひいおじいちゃんからはじまって。でも私はやりたくなかったので、やるまでブーブーブーブー文句を言ってきたんです。(笑)あれこれやりたかったのですが、文句を言って高校時代たいして勉強しなかったので、有名どころの東京の大学の法学部はばっちり落ちてしまい。(笑)当時あった東京の私立の大学の法律学科に進学し、同じ大学の学部に編入しました。その後も迷って全く違う仕事についたりもしたのですが、やっぱり代々続いているし、しょうがないなと思い、30歳を目前に司法書士を目指しました。みなさん司法書士ってあまり聞いたことがなくて、どういうことするのかってピンとこないと思うんですけど、私自身もやってみて初めてこういう仕事なんだと気づきました。親を見ていると、この仕事に就くと地元の各種団体などの役職に就くよう求められることが多いんです。なので、仕事そのものより、若造が資格を取って帰っても、そういったことが務まるのかが不安だったので、年齢的にも文句を言う前にまずはやってみてどういう仕事なのか、嫌だったらやめればいいかなと思って目指すことにしました。
滝口 ) 司法書士という仕事は随分昔からあったということですよね。今と昔で仕事内容は違うんですか?

早坂 ) そうですね。代言人・代書人・証書人制度の誕生から今年で147年目になります。代書人が現在の司法書士のことです。裁判所に提出する書類を自分で書くなんて難しいじゃないですか。昔は、裁判所に提出する書類を代書人として一般の人から聞いて代わりに書いてあげるということをしていたみたいです。 今の主な仕事は法務局の仕事と裁判所の仕事です。法務局に不動産を購入した、相続したというときや、会社を作り、運営する際に登記を出すことを代行するのが仕事です。割と法務局の仕事が多いですね。昔と同じように今でも裁判所に出す書類を代わりに書くということもあります。また、簡易裁判所の代理権をとると140万円までの民事事件であれば弁護士と同じように裁判ができるんですよ。 これに付随して、法律相談を受けるという感じですね。 裁判所の調停の他に、ハーモニーという山形県司法書士会の調停センターがあって、司法書士会の中で当事者同士が話し合いをし、それをサポートするというのもやっています。 ほかの士業と比べると、司法書士の仕事はピンとこないと思います。(笑) 例えば、家を建てた際には土地や誰の建物なのかという登記、会社などを作りたいときは会社の設立の登記、親が亡くなったら相続の登記、裁判においては答弁書を書いたり、被告代理人として出廷したりすることがあります。ですから司法書士は一般の方々と結構会う機会があるんです。
滝口 )生きていく様々な場面で接する身近な存在なんですね。

早坂 ) 裁判なんてなかなかやる機会はないですよね。だから答弁するにもどうすればわからないのが普通なんです。裁判の1週間前までに書類を出すよう言われるので、みなさん焦ってしまう。相続放棄の手続きに関しても、その方がなくなったことと財産があることを知ってから3か月以内と期限があってもあっという間に経ってしまうことも多いです。こういったときに司法書士が手助けすることができるということをみなさんに覚えていてもらえればと思います。身近な存在ではあるものの、やれることがたくさんあるからこそPRしづらいんです。 口コミなどでお客さんが来てくださるという感じです。
滝口 )司法書士会の広報活動としてはどのようなことをされているのですか?

早坂 ) 相談会を行う際はそのPRをテレビや新聞ですることと、司法書士がどのようなことをしているのかを伝えるために、マスコミの方とお話しして知ってもらうように働きかけます。これがきっかけとなって新聞のコラムに書いてと言われることもあります。 2016年には、東北芸術工科大学の学生の皆さんと、山形市の霞城セントラルで若い世代に司法書士を知ってもらうイベントを開催しました。学生の皆さんが私達がより身近な存在に感じてもらえるように、知恵を絞り、自分等でも気付いていない角度から企画を練ってくださいました。
 
(山形市で開催したイベントの様子)
他にも高校生を呼んで、司法書士の仕事を一日体験ということも以前やっていました。でもなかなか高校とのスケジュールが合わなくて…。なにかやりたいとは思っているんですが、なかなか難しいです。例えば他県では小学生とその保護者を対象としたワークショップを行っています。山形県でもそういったことをやれたらなと思っています。
文系的な力も理系的な力もどちらも必要
滝口 ) もともと司法書士にはなりたくなかったということでしたが、他にどんなことに興味がありましたか?

早坂 ) 高校生の頃は音楽や映画が好きだったので、芸術系の仕事をしたいなあと思っていました。でもこんなお堅い仕事をしています。
滝口 ) 今でも好きですか?

早坂 ) そうですね。映画は最近なかなか見れていないのですが、音楽は今もやっています。地元のゴスペルのサークルに入っていて、月2回レッスンを受けて、毎年11月に開催する仙台のゴスペルフェスティバルに出ます。そして今年は、「新庄・最上 第九を歌う会」 で山形交響楽団の演奏で第9を歌うので、6月からその練習をしています。第9のような裏声での歌い方とゴスペルのアレンジするような歌い方は違うので、頭を切り替えなきゃと思いながら並行してやっています。 他の趣味は、山登りですね。日曜日特に何もなければ山に行きます。普段は運転中もいろいろ仕事のことを考えちゃうんです。でも登山のときは無になれるんです。なので、日曜日に山に登ってリフレッシュして、リセットして、また月曜日から働きます。

(2015年・秋田駒にて)

(2016年・東大巓にて)
滝口 ) あまり興味のなかった法学系の勉強に抵抗はありませんでしたか?

早坂 ) 法学部の勉強は、すれば楽しいっちゃ楽しいんですよ。文系ではあるものの、物理が好きでした。法律は、理系的な理論を積み上げていく力と、文系的な文章をつくる力の両方が必要なんだと思います。周りにもエンジニアをやめて司法書士になった方がいて、やっぱりその方は理論の積み上げがとても上手ですね。
滝口 ) 司法書士の仕事では理論の積み上げが大事なんですね。

早坂 ) そうなんです。ただ、田舎のじいちゃん、ばあちゃんには理論的なうえにエモーショナルに伝えないと上手く理解してもらえないんです。(笑)裁判所の説明をするときは機械的に説明してしまうと、じいちゃん、ばあちゃんは冷たいなという印象を持ってしまうので、ロジカルとエモーショナルのバランスがいい人がこの仕事に向いているかなと思います。
滝口 )早坂さんは文系教科も得意だったんですか?

早坂 ) 得意じゃないです。(笑)国語や英語みたいな毎日積み重ねていかなければならないことは苦手です。一発屋なので。文章を書くのは好きではなかったですが、読むことは好きでした。大学の編入試験のため院生に小論文の書き方を教わりました。結局裁判官に読んでもらえないと、「この人何言ってるかわかんない」と思われてしまって、裁判に負けることもあるといわれました。一文はレポート用紙2行半で、「私は○○で✖✖✖だけど△△△だから…」とだらだらと書いたものは読まれません。「問題提起をする→裁判例、学説をあげる→だから私はこう思う→なぜならば○○○だから」というように簡潔に書けば、正しいことが書いてあるように見えれば、読まれる文章になります。私はこれが苦手でした。だらだら書いてしまって何が言いたいのかが自分でもわからないみたいな感じでした。(笑)上手く書けるゼミ生の小論文の書き方を盗んで、書けるようになりました。やっぱり相手に伝わるように文章を書くことが大切ですよ。
司法書士の仕事以外もついてきた
滝口 ) 東北の良さを仕事をしているなかで感じることはありますか?

早坂 )もちろんありますよ。地方だからこそ、お客さんとの距離が近いと感じています。事務所に気軽に入ってきてご相談くださる方が多いです。私もコミュニティの中に入っていっています。司法書士という仕事は、法律的な立場から意見を述べるという点で自治体などの委員に推薦されることも多いです。 NGOなど自分の司法書士の仕事以外で役職に就くよう求められることがあります。この両立は大変ですが、面白いですし、司法書士という立場から一歩引いた目線で見ることもできます。地域での仕事によって横のつながりが広がっていき、本業でもそのつながりを生かした仕事ができます。事例を紹介して「こんなこともできますね」とか「こういう法律もありますよ」とか、できることを提案できます。司法書士の仕事は独立しているように思われますが、実は税理士と組んだり、チームとなってお客さんをサポートしていますよ。
profile
早坂 智佳子さん
 

1972年4月生まれ
新庄市出身

<趣味・好きなもの>
登山・歌うこと・編み物

<セールスポイント>
最後の最後まで諦めない・投げ出さない。 依頼者の方の要望をそのまま実現することが難しくても、代替案を検討するなど、 何らかの方法で依頼者のニーズに応えられるよう努力する。
 
(取材:2018年6月)
interviewer
滝口奏(どすこい滝口)

出身地:山形県天童市
趣味:大相撲観戦
東北の好きな所:おいしいたべもの
モットー:万理一空
ひとこと:どすこい!
<編集後記>
早坂さんのお話から、司法書士が身近な存在だということを強く感じました。何か困ったことがあった際は、まずは早坂さんに相談したいです。高校が早坂さんと同じだという意外な共通点も見つかり、嬉しく思いました。 司法書士会でのワークショップなどを開催するときには、大学で学んでいることを生かし、お手伝いしたいです。