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■ 東北ウーマンインタビュー


山形初の「グランピング・スポット」をセルフビルディングで

山形初の「グランピング・スポット」をセルフビルディングで
山形への移住と新しい時代の創業スタイルとは?
GLAMPiC 代表長濱温子さん インタビュー

「グランピング」という言葉をご存知でしょうか?グランピングとは「贅沢なキャンプ」のこと。食事や寝具などの快適なサービスと、豊かな自然との触れ合いを両立させた、新しいスタイルでのキャンプの楽しみ方です。

今回、インタビューさせて頂いたのは、山形初となるカフェバー&グランピングスポット GLAMPiC の長濱温子さんです。東京都出身の長濱さんは、地域おこし協力隊としてパートナーの方が山形で生活を始めたのをきっかけに、一昨年、山形市に移住しました。山形駅から車で15分のこの土地(山形市新山)に3000坪もの裏山付き物件が貸し出されていることを不動産サイトで見つけると、グランピング施設をセルフビルドしようと決意しました。
創業のきっかけは“3000坪”の裏山付き物件との出会い
菅原 ) GLAMPiCを作ろうと思ったきっかけは何ですか?

 

長濱 ) 山形市内での創業を意識したのは一昨年の7月のことです。それまでは、まだ山形県寒河江市での起業を考えていました。でもなかなか良い物件には巡り会えませんでした。そこで、少し視野を広げてみようと思い、広く物件を探したところ、3000坪もの裏山付き物件が山形駅からわずか15分のこの地にあるのを見つけました。3000坪の裏山に加え、湧水を利用することもできます。湧き水をグランピックに利用できるのは面白いと思ったのもこの地を選択した理由のひとつです。実際に物件を見て大家さんにお会いしたところ、ものすごく面白いくアクティブな方でした。それで話が盛り上がり、その場で即決しました。

 

 

菅原 ) 東京ではどのようなお仕事をされていましたか?

 

長濱 ) 新卒採用のコンサルティング会社で営業職として2年間勤めていました。仕事も楽しかったですし得られることもたくさんあり、自分自身も成長することができたので、とてもよい経験になりました。でも、次第に「仕事はこうやって進めていくものだ」とわかってくると、今度は「自分で一からやってみたい」と思うようになりました。会社での仕事はルールが決められています。どんなに自分が「こんな風にやりたい」と思っても、なかなかその通りにはできません。こうした手口に経験を重ねるうちに、「もし、自分でやりたいようにやったら、どんな結果が戻ってくるのだろうか」と気になりました。実家が建築関係の仕事をしていたこともあって、子供の頃から将来は自分でゲストハウスのような施設を運営したいという思いもありました。

実際に自分で経営を始める前に、世界一周旅行を一度してみたいと思い、努めていた会社を辞めると、その後2~3ヶ月は海外で過ごしました。日本に戻って半年くらいは、東京で起業のための情報集めなどの準備をし、その後、山形へ移住しようと決意するに至りました。

 

 

菅原 ) そういう意味では、今でも“旅”を続けている感覚なのですか?

 

長濱 ) そうですね、正直なところまだ山形に定住した感じはあまりしてないです。それでも大分、落ち着いた感じはあります。実家が東京にあるので帰ろうと思えばいつでも帰ることもできますので、確かに長い旅をしている感覚ですね。本当に最初の頃は旅行くらいの勢いで山形に移住しました。(笑)

 

菅原 ) 学生時代はどんな学生でしたか?

 

長濱 ) 旅好きでよく旅をしました。大学生の時にグランドキャニオンに行って壮大な景色を見て「すごい」と感じ、そこから旅にのめり込みました。大学4年間ぐらいで15カ国ぐらいは海外に行ったと思います。あとバイトを本当に沢山しました。夏休みや自分の休みが多い時は2~3個掛け持ちしていました。バイトの掛け持ちは凄く辛いですけど、それでも海外旅行のためにはお金が足りず、親から借金をして、最後に行きたかったウユニ塩湖に行ってきました。今はもう返済済みですけど。(笑)

でも、沢山バイトをして良かったなって思っています。おかげで旅行にたくさん行くことができ、多くのインスピレーションを受けられました。そのことが現在にもつながっています。社会人になるとお金は比較的自由になりますが、今度は時間がなくなります。行かれる時に「今、行く」というのは悪いことではないと思いますよ。

 

 

菅原 ) 山形に移住されて、山形は他とはここが違うというようなところはありますか?

 

長濱 ) 山形だけの何か突出している特徴を聞かれますと、あまりよくわからないです。まだ見つけられてないのかもしれません。山形は自然がきれいです。ご飯もおいしい。だけど「山形だけ」かというと、そうとも言い難いです。でも、私みたいな県外からの移住者が実際に山形に来て感じたことは、「創業する」ということに対する行政や地域のバックアップは凄く発達していて、とてもありがたいという印象を持っています。

 

菅原 ) お客さんは県内からの方が多いですか?

 

長濱 ) そうですね、お客さんの8割ぐらいは県内からの方だと思います。もちろん「仙台から来ました」と言うような方もいらっしゃいます。

 

 

菅原 ) 他県からわざわざいらっしゃる理由は何だと思いますか?

 

長濱 ) 以前、仙台からきた20代のお客様と話した時に「山形は、今、新しい色々なお店が出てきているから楽しい」とおっしゃっていました。

 

菅原 ) 確かに新しいくワクワクするようなことが山形で起きていると実感しています。

 

 

菅原 ) ところで、セルフビルディングは大変ですか?

 

長濱 ) そうですね、1階のカフェ部分の電気水道関係は業者さんにお願いしました。それ以外の8~9割は自分たちで作りました。テラス席になっている2階部分と、この近くにある別棟のゲストハウス、裏山のグランピングエリアなども電気関連以外は全て自分たちで作っています。

 

菅原 ) どんなときにやりがいを感じますか?

 

長濱 ) お客さんに良いリアクションをしてただけた時が、やはり嬉しいです。「ご飯がおいしい」と言って頂いたり、食事の盛り付けの“見栄え”の良さに驚いて頂いたり。セルフビルディングの内装に「凄い!」とおっしゃっていただいた時なども嬉しいです。

メニュー開発も自分たちでしています。「このメニューは喜んで頂いている」など、そういう情報をメニューとして次々に取り入れていくことも楽しいです。自分がやったことに対して、お客様が直接反応して頂ける。こうしたことが、自分のやりがいに繋がっています。会社務めでは経験できないことでした。

 

 

菅原 ) 子供の頃から、今のようにアクティブで“強い”女性だったのですか?

 

長濱 ) 子供の頃から家族でキャンプとかに連れて行ってもらったり、兄が2人いた影響もあって男の子と遊ぶことが多かったです。それがあって、身体を動かすことが好きっていうのは昔からあったと思いますけど、中高の部活でさらに鍛えられました。中高一貫校で中学の時からダンス部に入っていました。女子校でしたが特に高校生の先輩からはビシバシしごかれるかなり厳しい部活でした。でも、そのおかげでメンタルも強くなりました。(笑)

 

 

さらなるビジョン

 

菅原 ) 今後の目標についてお伺いしたいです。

 

長濱 ) ゆくゆくはこの場所を若い方や山形に移住して新しい事業をやってみたいという方に任せたいなとも考えています。例えば週替わりで店長が変わるお店も良いですし、この場所自体を引き継いでくれる人がいれば最高です。それで私は一人旅をしながら何か別の事業ができればいいなって考えています。近くの方から無償で土地を貸してくれるというお話をいただきました。やっとゲストハウスをオープンさせることができましたので、今度はそこを利用して、また新しいことを始めるかもしれないです。もちろん何年かはここにいるつもりですけど。いつでも動ける身でいたいので、「ずっとここにいる」というイメージはないです。(笑)

 

菅原 ) 今までの話を聞いていたら“定住”はしないんだろうなって感じました。

 

長濱 ) 常に新しいことをし続けたいです。私は自分自身にも人に対してもシビアなので、なかなか“継ぐ人”を見つけられない気はしています。スタッフを募集しようと思っていますけど、なかなか探すのは難しいです。 以前、山形で開かれた創業のためのイベントで来場者の年齢層が幅広くご年配の方も多かったので驚きました。東京で同じようなイベントに参加したら20~30代の方がほとんどでした。山形ではあらゆる世代の方たちが、もの凄く元気だと驚いています。そして、今の山形は何か新しいことを始めるには、とてもよい環境だと思っています。
セルフビルディングの店が完成しました。他にも内装やイベントなどの新しいことをするというのは考えればいくらでもあります。常にいろんなことに取り組んで「これは当たりだった」や「こっちはハズレだった」といろいろチャレンジを重ねて良いものを取り入れていけば、少しずつファンも増えると思っています。何でも挑戦するしかないですね。

 

 

菅原 ) 若い人たちの山形への移住と創業の基盤を、長濱さんに作っていただいているような気がします。

 

長濱 ) “移住”となると仕事やお給料のことがあるのでハードルが高いと思います。「東京で稼ぐ金額と同じ位の金額を稼がないと・・・」となる人がほとんどだと思います。もちろん最低限の生活ができるレベルでいいという人もいると思いますが、仕事がないことはネックになります。仕事さえ作れればいいので、そのためにも、私たちのビジネスをもっと大きくしていきたいと思っています。

 

( 撮影 : 長瀬さくら )

profile
長濱温子さん
 

カフェバー&グランピングスポット GLAMPiC 代表

東京都出身。大学卒業後、新卒採用コンサルティング部門に2年間勤務。

退社後、2017年に山形に移住。

3000坪の裏山付きコンクリート住宅物件をセルフリノベーションしながら開業する。


GLAMPiC
〒990−0015 山形県山形市新山514−1
HP:https://glampic.wixsite.com/niiyama-yamagata
interviewer
菅原桃佳

出身地:山形県鶴岡市
趣味:人とコミュニケーションをとること
東北の好きな所:自然が日常にあるところ
モットー:後悔しない毎日を
ひとこと:美味しい物・場所を開拓する!